2024年2月28日
2024年1月21日(日)に仙台市青葉区国分町の肴町匙様にて「TERROAGE ONAGAWA~女川の食を楽しむ会~」が開催されました。今回はイベント開催のきっかけや、及川秀治シェフが作ったこだわりの料理についてご紹介します。
宮城県の東部、牡鹿半島の付け根に位置する女川町は、人口6000人に満たない小さな港町です。コバルトブルーに輝く女川湾は、その背後にある北上山地からの栄養が流れ込む豊穣の海。ここでは、古くから牡蠣やホヤ、ホタテや銀鮭などが育てられてきました。
小さな港町である女川町で、今、新しい取り組みが始まりました。それが、「TERROAGE ONAGAWA(テロワージュ女川)」。
仕掛け人の一人である女川町商工会の磯部哲也さんは「女川は本当にいい食材があるのですが、なかなかPRができていないという思いがありました。また、女川でイベントを行ってもなかなか人を呼び込むのが難しいということも感じていて。だったら、仙台や東京の都市部でいいものを知る人たちを対象にイベントをやって、女川を知ってもらうきっかけにしよう。女川に来てもらおうということになったんです」と話します。
そこで相談をしたのが、旧知の仲であった及川秀治さんでした。及川さんは、仙台市中心部の国分町で超人気の創作料理店「肴町 匙」などを経営する料理人。震災復興支援の一環で女川町の小学生たちと一緒に料理を作って食べるというイベントを行うなど、女川町とも縁の深い及川さんに、磯部さんは「肴町 匙」でのテロワージュイベントを持ち掛けたのです。
及川さんは「僕、女川が大好きでよく通っていて、食材がいいのは知っていました。ただ、よすぎてあんまり手を加えたくなくなっちゃう(笑)。そのくらい、女川の食材っていいんですよ」と笑います。
こうして実現したのが、「女川の食を楽しむ会」。及川さんは「海外のオイスターバーをイメージしてイベントを組み立てたんですよ」と話します。イベントには「肴町 匙」の常連さんやInstagramを見たというお客さまで満席になりました。
このイベントのために提供された女川の食材は、銀鮭、ホヤ、サンマ、ホタテ、タラ、ムール貝、シングルシード牡蠣、そして鹿肉でした。
及川さんが作ったのは「女川 銀鮭のマリネのパイ」「ホヤと八朔のカルパッチョ」「女川サンマのピクルス」「ゆず酢 サンマ棒寿司」「女川 帆立のソテー 雲丹バターソース」「女川 活タラのフィッシュ&チップス」「女川 活ムール貝 白ビール蒸し」「女川 シングルシード 焼き牡蠣」「女川 ホヤとマッシュルーム ブルゴーニュ風」「女川 野生鹿ロースト 黒トリュフのソースと野山の野菜添え」の計10品。どれも素材の味を引き立てつつ、及川さんの創意工夫が光る逸品に仕上がりました。その中でも、とくにお客さまからの反応が大きかったというのが、鹿肉だったそう。
磯部さんは「牡鹿半島というくらいですから、野生の鹿はたくさんいるんです。ここ最近は罠猟が増えてきて女川に解体所ができたことで、生きたまま搬送し、放血から解体、冷蔵を最短で行うことができるようになりました。チルド室に吊るして2週間ほど熟成し、死後硬直が解け適度に水分が飛んだタイミングで部位ごとに真空パックしてお届けしているんですよ」と教えてくれました。及川さんも「最後に“おっ”と思わせる料理を提供したくて、黒トリュフと合わせました。結果、お客さまが喜んでくれたのでよかったです」と笑顔を見せます。
また、女川で震災後に養殖が始まったシングルシード牡蠣も好評でした。「シングルシードというのは、養殖の方法を指します。この養殖方法で育ったシングルシード牡蠣は小さくてカップの深い一口サイズ。塩気がちゃんとしていて、クリーミーさもあって、オイスターバー向けの牡蠣なんです。店でも春先になれば提供する予定です」と、及川さん。
磯部さんは「イベントでは、お客さまから『女川は知っていたけれど、こんなにおいしい食材があるなんて知らなかった』という声や『こういうイベントを定期的にやってほしい』という声をいただき、うれしい限りです。おいしいものを知っている人たちに、今後も女川のおいしい食材を届けていきたいですね」と話します。
東京で開催した「テロワージュ女川」イベントレポートは以下のリンクからご覧ください。